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任侠沈没

任侠沈没 山口正人(著) 日本文芸社
「……もし…… 大紋寺さんが
本当に宇宙まで 行ってしまっていたら
もう 生きてはいないでしょう
あの人は… あんな人ですけど…
一応… 生身の人間ですから…」
全3巻。
漫画に限らず、フィクションを楽しむときにはリアリティのレベルがどこに置かれてるのか、
どこに目を瞑ってどこにツッこむべきかの見極めを僕らは知らず知らずに行っている。
任侠と(日本)沈没。
ヤクザものと大災害ものを組み合わせましたよ、
と見るだけで分からせてくれる秀逸なタイトルで、
内容も妻子を組長に殺された主人公・大紋寺龍吾の復讐の旅を縦糸に、
第1巻では覚せい剤入りの炊き出しをして住民を顧客にしようとする暴力団や、
金銭ではなく農作物を賭ける丁半賭博、復興を諦め自衛に走る自衛隊、
といったいかにもなエピソードが続く。
リアリティ、と言う意味においてはタイトルに見合った荒唐無稽さである。
しかし、ストーリーは進むにつれ、荒唐無稽が加速する。
風野又三郎というキャラが現れる。ふざけた名前だ。
伊豆の孤島の刑務所に収監されていた死刑囚で末期がんの患者だが、
脱獄し、龍吾の命を狙いつつ旅に参加する。
問題は脱獄の方法だ。
病気と地震で食事を運ぶ看守がいなくなり痩せさらばえた体を襤褸に包み竜巻に乗るのだ。
漫画のテーマから演繹される守るべきリアリティの線が、
僕が勝手に引いた線ですが、超えられた瞬間である。
以後、オーバーな(過剰と言う意味でも超越という意味でも)表現が何度も現れ、僕を当惑させた。
そして、つられる様に龍吾の思考が単純化していく。
3巻全体で放たれる異様な空気感はどう言えば良いだろうか。
過剰な表現はギャグに通じる。
が、大地震で社会が崩壊しても任侠は消えず、NHKの集金人も消えなかった、
というエピソードが出て来ても、ギャグか、マジかの判断が僕には決められなかった。
ギャグで書いてても面白いが、マジで書いてたらもっと面白い。
多分両方なんだろうけど。
組長が乗る飛行船に追いつくべく、
スペースシャトルに間違って乗ってしまう(!)ラストに至って、
「えええぇーっ!」と僕は大声を上げて唖然とした。
わずか3巻で何度線を越えられたのだろうか。
クラクラとくるこの読後感は、間違いなく体に悪い。
・佐藤良寛
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